全4回:ブランディング会社のセルフリブランディングストーリー #02
2023年8月に企業理念やサービスの見直しをはじめ、ブランドロゴやWEBサイトの一新など、会社全体のセルフ「リブランディング」を行ったブランディングカンパニー「エフインク(F-INC.)」。構想から数年越しで行われたリブランディングの目的や込めた想い、デザイン表現についてなど、数多くのブランドのリブランディングを手がけてきたブランディング会社ならではの視点を交えながら全4回の記事でお届けいたします。
第2回目は、今回のリブランディングを経て新たに掲げた「パーパス」と「DNAブランディング」について。代表でありブランディングプロデューサーの萩原と、ブランディングプランナーの中澤から、インタビュアーの「今井 夕華」さんに当事者ならではのエピソードを引き出していただきました。
エフインクプロフィール
1990年設立のブランディングカンパニー。企業やブランドの戦略立案から、ビジュアルアイデンティティの制作まで、ブランディングに関することを幅広くサポートできるのが特徴。2023年8月、会社のパーパスやDNAを新たに設定。ロゴやWebデザインも一新し、変化を遂げた。
代表取締役社長/ブランディングプロデューサー
萩原 房史
大手CIコンサルティング会社にて複数の企業のCIプロジェクトに参画。 1990年、CI発表後の顧客体験までをサポートするブランディング会社としてエフインクを設立。以来300件以上の企業やブランドのブランディングを手掛ける。社会を良くしていきたいという想いや志をブランディングで実現していくことが喜び。
大学卒業後、不動産会社勤務を経て2018年エフインク入社。プロジェクトでは主に企画設計・コンセプト開発・コピーライティング・進行管理などを担当。ブランドの想いをお客さまとともに紐解き、可視化し、社会へと届けることがなによりの喜び。
1. 新たな企業理念のかたち「パーパス」
今回のリブランディングを経て新たに定めた企業理念のかたち「パーパス」。そしてその内容は「企業と社会の好循環をつくる」というものです。なぜ今回「パーパス」を掲げることにしたのでしょうか。そのきっかけからお話を伺います。
萩原「直近の企業理念は『美しい未来を創造する』というものでした。その時代に合わせ、会社の方向性もチューニングするイメージで、創業以来30年の間に何度かは企業理念の表現は変えてきています。我々がお客さまをサポートすることで、ブランドとしてより良くなったり成長していったり。その活動を通して、お客さま、我々、そして社会が幸せになっていく。表現はその時々で変わっても、信念的な想いの部分は創業して以来ずっと変わっていません」
時代に合わせたかたちで、エフインクが存在する目的や目指すべき未来を表現した「パーパス」。社内ではどのような話し合いが行われたのでしょうか。今回のリブランディングをリードしたメンバーのお一人、中澤さんに伺います。
中澤「社員同士で話し合いを重ねました。エフインクの強みや弱み、他社と比較したときの独自性など自己分析を徹底的にして。これまでのお客さまを振り返り、どのような点を評価いただいていたのか見直すことで、自信を持って『これだ!』と言える強みが明文化されていきました。社員の人数も少ないので、全員がしっかりと納得でき、ワクワクするような、その言葉によって鼓舞されるような理念をつくりたいと思い、進めていきました」
2. 新たなパーパスは「企業と社会の好循環をつくる」
短い文章の中に、エフインクの思いや決意がたくさん詰まっています。このパーパスに辿り着く過程では、一つひとつのワード選びにも多くの時間を要しました。
萩原「『好循環』の表現については、けっこう議論を重ねましたね。『好循環』って動きがある言葉で、継続していくとか、変わり続けていくとか、変化を感じる部分がとても良いなと思っています。あとは、誰のためのブランディングなのか。今までの企業理念では対象とするものも曖昧な部分がありました。今回のパーパスでは、私たちの役割と目的を明確にし『企業』と『社会』に役立つことを宣言しました」
中澤「『ブランディング』の捉え方についても、パーパスの中にエフインクらしさを表現したかった部分です。ブランディングを、デザインが整ったら完成、ウェブサイトが綺麗になったら完成、など『目に見えるものが変わる=ブランディングのゴール』と捉えている人や企業がまだまだ多いと感じていて。目に見える要素ももちろん重要ですが、私たちが一番大切にしているのは、ブランドの思いを当事者一人ひとりが自分ごととして捉え、時代に合わせた方法でブランドを育て、社会と共に成長し続けること。そんな『終わりのない活動』が重要であることを示したいなと考えていたんです。今回のパーパス『企業と社会の好循環をつくる』という言葉が、そんな私たちの目指す姿をぴったりと言い当てているなと思っています」
3. エフインクのサービスを再構築「DNAブランディング」
「パーパス」と同様、今回のブランディングを経て新たに掲げられた「DNAブランディング」。企業の説明においては聞き慣れない言葉ですが、どういった経緯でこのような表現に決まったのでしょうか。
萩原「DNAというと、一般的には変わらない、変えられないイメージですが、実は生命学的にも常にDNAは変化していて、その変化そのものが進化なんですよね。だからこそ、企業が培ってきた今までの歴史やノウハウといったDNAを、時代に合わせて柔軟に進化させていきたいと思っていて。『DNAを進化させるブランディング』がエフインクのブランディングにおけるテーマです」
エフインクが表現する「DNAブランディング」は、エフインクの歴史や起源、文化など6つの要素で構成されています。その一つひとつがエフインクを形にする、なくてはならないもの。改めて言葉にしていく過程で、見えてきたものがあったといいます。
中澤「自分たちがやってきたことを、細かく棚卸ししたんです。その結果、コンセプト開発から手掛けられることや、社員を巻き込んだワークショップを行えることなど、他社との差別化でもっと強く打ち出していけることが見えてきて。自分たちの得意分野が認識していたよりも進化していることがわかってきました。それを改めて取りまとめ、わかりやすくなるよう順序立てて組み直したのがDNAです」
DNAブランディング
エフインクの提供するサービスの核となる要素。強固で魅力的な「守るべきDNA」と「変えるべきDNA」を見極め、ブランドの本質的な特徴を保ちつつ、時代に合わせて進化させていくことが社会から必要とされ、愛されるブランドの鍵となります。
エフインクのブランディングについて詳しくはこちら
4. お客さまの「ブランドDNA」も紐解いて
「DNAブランディング」はエフインクのサービスを再構築したものであると同時に、「ブランディング」をする際にクライアントに対しても掘り下げていきたい内容だと萩原さんは話します。
萩原「ブランディングを導入したい、と思って私たちにお問い合わせくださる皆さまは、『新たなかたちに変わっていきたい』『新しい事業を成功させたい』という思いをもっています。それは、今あるものから進化したい、という動機。そうしたとき振り返るのが、その企業がもっている元々の強みや創業時の思い、醸成されてきた独自の文化など。企業それぞれの『DNA』を振り返り、見直すことを通して、どう進化させていくか考える。その過程こそが、ブランディングを成立させると考えています」
中澤「クライアント自身が『そんなの大したことない、当たり前』と思っているようなことでも、第三者からするとものすごく価値のあることだったり、ニッチで面白い話だったりしますよね。個人的には、そこを素直な素人の目線で感じ取って、感動を表現していくことをブランディングにおいてとても大切にしてきました。変わりたいという気持ちも、今まで培ってきたものを大切にしたいという気持ちも、全部含めてその企業を構成する大切な要素。未来に向けて成長していく姿です。それをうまく言葉にして表現できれば、働く人たちもその言葉を大事にして、もっと磨いていこうと思ってくれるんじゃないかなと。その表現として『DNA』という言葉を提案するのは、違和感なく腑に落ちていいなと思いますね」
「リブランディング」を進める話し合いの中で出てきた「DNA」という単語。そこから一気に話し合いが加速したというから、まさに「DNA」がエフインクをかたちづくるキーワードだったことがわかります。
次回の記事では、「Webデザイン」や「ブランドロゴ」といった「ビジュアルアイデンティティ」の制作秘話を伺っていきます。「パーパス」と「DNA」、2つの大きな要素をお客さまに伝え、変わっていくエフインクの姿を表現するためのデザインとは、一体どういったものなのでしょうか。
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記事を書いた人
編集者、バックヤードウォッチャー。アーティスト、研究者、専門家、職人さんなど「何かが大好きでたまらない人」たちの専門的な話を分かりやすく伝えています。人間味あふれるバックヤードが大好きです。
株式会社アフロ入社後写真部アシスタントとして勤務。その後ビーム・バイ・テンへ入社し、フォトグラファー佐藤孝仁氏に師事。以降フリーランスとして活動した後、目黒区柿の木坂に個人事務所 Studio Functionを設立。